人の次は荷物、荷物の次はまた人
前回は履歴書マッチングとオンボーディング自動化のお話をしました。人を受け入れる場所を整理し終えると、その次に自然と続く問いは、結局「その人が運んでいた荷物はどう流れているのか」になります。人材不足の悲鳴が真っ先に上がる現場が物流であることは、韓国でも日本でも統計でわざわざ証明する必要がないほどです。
だからといって「AIで物流を丸ごと変える」といった話は、この場には似合いません。ピックアップ・トラッキング・通関と続くパイプラインのどこかで、毎回同じ場所で途切れます。その途切れる場所に何をどう挟み込むかが、自動化が定着するか、1年後に静かに消えるかを分けます。

なぜ「途切れる場所」から見るべきか
業界報道によれば、日本は2030年までにドライバーが27%減少し、全貨物の36%が運べなくなる可能性があるという警鐘が鳴らされています。36%と聞くと小さく見えますが、仕事3件のうち1件が止まるという意味です。韓国がこの曲線を5〜10年遅れで追わないと断言できる方は多くないでしょう。
興味深いのは、この圧力が「全工程を自動化しよう」という結論にそのまま繋がるわけではない、という事実です。先月、ある3PL企業の代表の方と2時間近くお話しする機会がありました。席に着くなりこうおっしゃいました。「ルーティングソリューションはすでに導入済みです。問題はその次なんです」。その方のモニターにはトラッキング番号が1行、赤く止まっていました。車は出発したのに、荷主に送るETAを誰が更新すべきかが空白になっている状態でした。
最初は私も「AIルーティングをうまく繋げば終わるのではないか」くらいに見ていました。実際に踏み込んでみると、ルーティングはすでに大抵の会社に入っています。途切れる場所は、ルーティングとルーティングの間、システムと人の間、韓国オフィスと日本の通関窓口の間といった「余白」の側でした。業界で「無計画な自動化設備投資の前に、物流センターの現況点検と最適化コンサルティングが先」と繰り返し指摘される理由がここにあります。
パイプラインを3つに分けて見る
現場では通常、3つの区間に分けて途切れる場所を探します。ピックアップ、トラッキング、そして通関・書類です。
1)ピックアップ — ディスパッチ盤に「手書きメモ」が残っていないか
Onfleet、HemutといったSMB向けラストマイルツールが普及し、ルーティング・ドライバー割当・顧客通知が1つの画面で処理されるのが標準になりました。ただし、標準になったという話と定着したという話は別です。ディスパッチ担当者の机の脇に、依然として手書きメモが束で積まれている会社は少なくありません。
このメモが消えない理由は単純です。荷主がLINEで投げてくる「30分後にもう1件送ってもいいですか」が、システムのどこにも入り込む余地がないからです。ピックアップ自動化の核心はルーティングアルゴリズムではなく、こうした非公式チャネルの入力を「仮の注文」としてでもシステムに流し込む、小さなアダプター1枚にあります。
2)トラッキング — 通知が「誰に」届くべきかが空白になっている
現代グロービスのORCA・GVISのような大型プラットフォームが、リアルタイム可視化をどこまで引き上げたかは、ニュースで十分に取り上げられてきました。気候や紛争のような突発的な変数に対し、代替輸送経路を自動で算出するレベルです。中小荷主がこうしたシステムをそのまま導入することはできませんが、発想は持ち帰れます。
「貨物がどこにあるか」はこの10年でかなり解かれました。むしろ解けていないのは「この情報が誰に、どんなトーンで届くべきか」のほうです。同じ30分の遅延でも、馴染みの荷主には短いメモ1行で済みますが、新規荷主には謝罪の一言と代替ETAが一緒に届く必要があります。グローバルなトレンドは、この判断を人が毎回行わなくて済むよう、「agentic」な自動化に移していく流れです。単純なRPAが「ルールの決まった仕事を速く」処理していたとすれば、こちらは「今回の貨物は誰にどのメッセージをいつ送るか」までを判断します。この差が昨年からSMBの現場でも実感されるようになってきました。
3)通関・書類 — 人が毎回確認しなくて済むように
通関は韓国・日本の両方で働く商社・フォワーダーにとって、最も「胃が痛む」区間です。レーンごと、品目ごとに適用される規制が異なり、書類が1マス空いただけでコンテナが数日止まります。夜間の通関待ち画面を一度でも見たことのある方なら、このコストの重みが分かるはずです。
この1〜2年で意味のある変化は、LLMを通関ETA予測・AP照合・書類検査の場に挟み込む試みが、「デモ」段階を越えて運用に入り始めた点です。核心はLLMが通関士の判断を置き換えるという話ではなく、同じレーンで過去6か月にどんなパターンで処理してきたかを、人がもう一度思い出さなくて済むようにしてくれる、という点にあります。私たちが5years+で進めてきた自動化プロジェクトでも、通関側はほぼ常に「全面自動化」ではなく「検査補助」の形で入ります。そのほうが定着率が圧倒的に高いからです。
では、どこから手をつけるべきか
Amazon千葉みなとフルフィルメントセンターが1日60万個を2〜3時間で出荷するという報道が、昨年からよく引用されます。印象的ではありますが、正直に言えば、韓国・日本のSMBの意思決定にはあまり役に立たない数字です。あちらは「最後まで自動化するとこうなる」の参考にすぎず、出発点が違いすぎます。
現実的には3つの問いで十分です。第一に、自社で「同じ人が毎週同じ時間に同じ画面を見ている場所」はどこか。第二に、荷主・倉庫・運送会社の間でメッセージがLINE・電話・メールに散らばっている場所はどこか。第三に、人が席を外すと止まる判断は何か。この3つの問いに素早く答えが出る会社は、自動化ツールを選ぶ前にすでに半分は終わっているようなものです。
ちなみに前回のHR自動化の記事で扱った「人が入ってくる場所」の整理作業と、今回の「荷物が流れる場所」の整理作業は、同じ会社の中で切り離された仕事ではありません。HR側で整えておいた権限・オンボーディング情報がディスパッチ画面のアクセス権限と通関システムのユーザーアカウントにそのまま流れることで、夜間に誰がETAメモを更新するのかといった小さな判断も、人を交代しながら継続できます。
おわりに
物流自動化は「AIルーティングを一度導入した」で終わる話ではありません。ピックアップ・トラッキング・通関の間にある余白を1つずつ埋めていく作業であり、その余白を見つけるのに最も適したツールは、今でも「先週、誰がどこで止まったか」を問うことです。
私たち5years+は、韓国・日本の中小企業の自動化導入を小さなPoC単位からご一緒してきました。自社のパイプラインのどこが途切れているかを一度整理してみたい方は、無料相談はこちらからお気軽にお問い合わせください。既存事例の資料が必要であれば、そちらも併せて整理してお送りします。
次回は、荷物が動いた後についてくるお金の流れのお話です。請求処理から決算まで、税務・会計のどこまでが人の手を減らせる区間なのかを整理してみます。